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全日空によるボーイング787の初就航 [馬さし経済研究所]

8月23日、全日空(ANA)がボーイング787を11/1から羽田-岡山、羽田-広島の国内線に、
12月から羽田-北京(中国)の国際線、2012年1月からは羽田-フランクフルト(ドイツ)の
長距離国際線に就航させるとの発表がありました。

ボーイング787の路線計画について
https://www.ana.co.jp/promotion/b787/info/archive.html#06

B787は、ボーイング社が開発している次世代中型ジェット旅客機で、主にB767の後継機
としての意味合いの強い航空機です。
中型機としては航続距離が長く、今までは大型機でないと行けなかった長距離も直行が可能
になり、需要のあまり多くない航空路線の開設が可能になるとされています。

また、B787では、複合材料の使用比率を約50%まで上げたことによる機体の軽量化、空力
改善、エンジンの燃費改善等により、B767と比較すると燃費は20%向上するとされています。

機内の居住性においても、窓が大型化され、客室の天井が20cm高くなり、キャビン内に
加湿器が初めて標準搭載されるという工夫がされています。
特に加湿器については、今まで機内の乾燥が気になっていた方には朗報ですね。

そんな良いこと尽くめにも思える全日空による世界初のB787就航ですが、生産初期の機体
にはひとつ大きな問題があります。設計仕様に対する重量超過の問題です。

ボーイング社は、B787の製造重量が設計値を超えていることを公式に認めていますが、
どの程度かは明らかにしていません。
一説には仕様に対して、原型1号機は9.5トン、量産1号機でも重量95.5トンに対して4.5トン
(約5%)重くなるというのです。航空機にとってこの重量超過の問題は深刻です。

ボーイング社では生産20号機までの機体では重量が仕様より超過しており、21号機以降に
重量軽減プログラムが導入されています。

そして、B787のローンチカスタマーである全日空は、この生産20号機までの機体をなんと
9機も導入するのです(LN7,8,9,11,12,13,14,15,18)。

ちなみに20号機までの他の機体は、LN1~6は未定、LN10,16はLAN航空、LN17,19は
Royal Air Maroc、 LN20は日本航空(JAL)に引き渡します。

これは今後20年は使い続けるであろう期間、燃費の悪い初期ロットの機体で国際競争を戦わ
なくてはならないことを意味しています。それでもB767と比べれば燃費は良いと思います。

全日空は、2007年に本業である航空運送業へ経営資源を集中させる狙いから、当時有益な
物件を抱えたホテル事業を売却して得たお金で、B787を中心とした新機材投入などの設備
投資資金に充当しました。

もちろん全日空もボーイング社に対して、納期遅延を含めてペナルティ、もしくは値引きという
形で交渉すると思いますが、設備投資においては、初期導入コストよりも運用後のランニング
コストの方が高くなるケースもあり、手放しで喜んでばかりはいられません

これから来年にかけて、ボーイング787の話題が多くなるかと思いますが、今後の全日空の
動きに注目です。

追記
エアライン2011年10月号によると、B787の重量超過は2008年8月時点で5.7トンになる
との記事がありました。


*ローンチカスタマー:
新たな航空機について、メーカーに製造開発を踏み切らせるだけの充分な規模の発注を行い、
その新型機製造計画を立ち上げる後ろ盾となる顧客。
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コメント 15

おろ・おろし

初度生産機が、重量オーバーとは知りませんでした。

それにしても開発スケジュールが大幅に遅れましたね。
A380も遅れたと思いますが・・・。

あとは、初期不良がないことを祈ります。
by おろ・おろし (2011-08-25 20:05) 

とり

重量過多が20機も!!
頭痛いですね~。
機体のどの部分が重くなってしまったのかも気になります。
胴体部分ならペイロードがその分減ってしまうので、
燃料食いの上、稼げない駄馬ということに。。。
前方とか後方とか、重い部分が偏っていると、そのままでは飛行姿勢にも影響が出るので、重いだけでなく抗力増大でますます燃費悪化。。。
ディスパッチ、グラハンに余分な負担が増えそうですね。
ANAはこの9機にこっそりマークでもつけるんでしょうか。
by とり (2011-08-26 07:52) 

basashi

>おろ・おろしさん
B787の開発スケジュールは大幅に遅れましたが、このような中型機
の需要は多いと思います。
ただ、生産20号機までの引き渡し先に、米国、欧州の航空会社が一社
も入っていないのが気になります。
by basashi (2011-08-26 13:19) 

basashi

>とりさん
この重量超過は、主翼の外側寄り、中央ウィングボックス、翼前縁、
主脚のホイールウェル、中央胴体等を強化したことによるものとのこと。
主に機体の重心に近い部分なので、飛行姿勢にはあまり影響ないと
思います。
by basashi (2011-08-26 13:20) 

YAP

もともと北京オリンピック時の就航開始が計画されていましたが、ほとんど次のオリンピックの時期にまで遅れてしまいましたね。
それだけに、ようやく待ちこがれたものがという思いを強くしている人も多いと思います。
by YAP (2011-08-26 14:20) 

basashi

>YAPさん
旅行業界は、このB787就航に合わせてツアーを組むところもある
ようですから、関係者の期待も大きいと思います。
私が全日空の記事を書くと、このような厳しいものになってしまう
ことが多いのですが、B787の登場で空の旅が変わりそうですね。

by basashi (2011-08-26 16:49) 

aloha

ANAにはとんと縁がないのですが(^^;)
それにしても、キャビンに加湿器とはいいですね!
機内の乾燥には、本当にいつも悩まされます。
国内線程度の飛行時間なら何とも思いませんが、
ぜひ、国際線(特に長距離)に多く導入してもらいたいものです。
by aloha (2011-08-30 12:30) 

basashi

>alohaさん
飛行機の機内があんなに乾燥しているのは、、実はエアコンによる
結露を防ぐ目的がありました。
新型のB787やA380では、機体軽量化のために金属に代わって
複合材が使われるようになり、湿気による金属腐食のリスクが減った
ため、機内の加湿が可能になりました。
とはいえ、上空の空気は乾燥しており、機内を加湿するためには大量
の水を積み込まなくてはならないため、航空会社にとってはかなりの
負担増なんですよ。
by basashi (2011-08-31 19:51) 

aloha

そうだったんですか!
乾燥対策に集中してしまい、『なぜ?』ということには
気が回りませんでした(^^;)
>航空会社にとってはかなりの負担増なんですよ。
では、我慢しなくちゃですね(笑)
勉強になりましたm(_ _)m

by aloha (2011-09-02 16:53) 

basashi

>alohaさん
これからは肌荒れを気にせず、快適な空の旅ができる時代になる
と思いますよ。
どうですかぁ、こんなサービスがあるなら、ちょっと料金高いけど、
次の旅は全日空使っちゃいますか?!
by basashi (2011-09-02 19:59) 

とり

TBありがとうございました。
それから遅くなりましたがご回答もありがとうごさましたm(_ _)m
重量増は主翼周りなのですね。
主翼そのものも重量増ということで、
零燃料重量の面ではちょっとはマシですね。安心しました~。
by とり (2011-10-03 05:05) 

basashi

>とりさん
この重量超過の問題は、エアバス社の「ボーイング787の教訓」という
報告書に記載されているとのこと。この資料はインターネットでも閲覧
することができるので、興味があったら検索してみて下さい。
by basashi (2011-10-03 21:04) 

basashi

自己レスです。
787の加湿システムは、従来の方式とは異なり加湿用の水は必要ないことがわかりました。
「747-400でも水を噴霧することでコクピットや前方キャビンの一部を加湿したことがあったが、これは効果が限られていたし(機内の空気は2~3分でほぼ入れ代わる)、必要な水の重量も増してしまうという欠陥があった。しかし787では機外に捨てる空気の量を減らす代わりにフィルターを通して何度も空気を循環させるようにしているため、わざわざ水を噴霧しなくても人の息やギャレーのコーヒーメーカーなどから出される水分をあまり逃がすことなく機内にとどめることができる。結果として機内の湿度も高く維持することができるのである。」(月刊エアライン2010年3月号から抜粋)
「キャビンの天井裏には前後2ヶ所にゾーナルドライヤー(区分乾燥機)と呼ばれる装置があり、ここを通った空気は約80%の乾燥空気と約20%の湿った空気とに分離される(ちなみに空気は湿度が高いほど軽くなるので、天井裏の空気はキャビン部分よりも湿度が高くなりやすい)。このうち乾いた空気は天井裏に放出されていずれはアウトフローバルブから機外に流れ出ていくが、湿った空気は配管を通して床下に導かれ、電動コンプレッサーを出たあと温度や気圧を整えられた空気と混ぜ合わされてキャビンに送られる。こうしたことを繰り返す結果、機内の湿度が高く保たれるのである。また、これとは別に長距離仕様の機体ではコクピットやクルーレストに加湿する装置も装備できる。」(月刊エアライン2011年11月号から抜粋)
by basashi (2012-07-07 09:35) 

NO NAME

>機内を加湿するためには大量
の水を積み込まなくてはならないため、航空会社にとってはかなりの
負担増なんですよ。

いったい何処からこんな出鱈目情報が出てきたのか
ソースは何処?
by NO NAME (2013-03-20 14:22) 

basashi

>NO NAMEさん
787の加湿システムについては自分自身誤解していたこともあり、
↑で訂正コメント(2012年7月7日)を入れています。
by basashi (2013-03-22 20:18) 

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